大判例

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大阪地方裁判所 昭和27年(ワ)217号 判決

原告 松倉貞次

被告 下川淑子

一、主  文

被告は原告に対し大阪市阿倍野区阿倍野筋三丁目七十一番地の六宅地二百四十七坪二合二勺に付いて、債権者松倉貞次連帯債務者下川忠平及び下川淑子貸借成立日昭和二十五年十一月六日債権額金三十万円弁済期昭和二十六年十一月六日の債務を担保する抵当権設定登記手続をしなければならない。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求めその請求原因として、主文第一項記載の宅地は被告の所有であるが、昭和二十五年十一月六日原告は被告及び被告の父下川忠平を連帯債務者として、右土地を売渡担保として金三十万円を弁済期一ケ年後の約束で貸与した。然るに右債務者等は右弁済期である昭和二十六年十一月六日を経過しても、右債務を支払わないので、その担保物件処分の必要上これに抵当権設定の登記手続を求むるため本訴に及んだと述べ、被告の抗弁を否認した。<立証省略>

被告は原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。との判決を求め、

答弁として、原告の主張事実のうち、原告主張の宅地が被告の所有に属すること及び被告がその父訴外下川忠平と連帯して原告から金三十万円を借り受け、右宅地を右借金の担保に供したことは認めるが原告その余の主張事実は全部否認する。と述べ、

抗弁として、

前記三十万円の貸借成立の際に原告と訴外下川忠平及び被告間に右債務の利息を三ケ月遅滞しない限り、担保物件を処分しない旨の特約が成立していたところ、訴外下川忠平は昭和二十七年一月まで右借金の利息を支払つているので原告は同年四月末日まで本件宅地を処分できない道理である。然るに原告は同年一月に本件の宅地が自己の所有に帰したと称して本訴を提起したのであるから、右担保物件処分の便宜のために、被告に対し右宅地について抵当権設定登記手続を求める原告の請求は失当である。仮りに然らずとするも、訴外下川忠平は原告に対して右金員を借受けた昭和二十五年十一月六日から昭和二十七年一月十四日までの間に、右借金の利息名義で一ケ月金一万八千円宛合計金三十五万二千円を支払つたところ、右は利息制限法所定の利息の制限を超過する支払であるから、同法所定の制限利率を超えて支払つた部分は当然元金の支払に充当すべきものである。そうすれば右借金は僅かしか残存しないから、元金三十万円全額について抵当権の設定登記を求める原告の請求は失当であると述べた。<立証省略>

三、理  由

本件の宅地が被告の所有に属し、被告がその父訴外下川忠平と連帯して原告から金三十万円を借り受け右宅地を右借金の担保に供したことは当事者間に争がない。そして成立に争のない乙第一号証及び甲第一乃至第三号証によれば右貸借の成立は昭和二十五年十一月六日であつて、利息は一ケ月一万八千円毎月その月分支払、弁済期昭和二十六年十一月六日の約定であつたこと及び本件宅地は右債務を担保する為めに売渡担保として被告から原告に提供せられたものであつて、右担保契約に基いて本件宅地について原告を買主とする売買予約の仮登記手続がなされていることを認めることができる。売渡担保契約に基く売買予約の仮登記は債務者の担保物に対する権利の他に移転するを防ぐには有力な手段であるけれども担保物の処分には不便であるから、不動産を売渡担保にとつた債権者は債務者に対し右担保契約の趣旨に従つて担保物について抵当権設定登記手続を求めることができる。なるほど前記乙第一号証によれば本件三十万円の貸借には債務者が三ケ月間利息を支払わないときは債権者は担保物を処分することができる旨の約定があり、印影の成立に争がないから、印影のある月には約定の一ケ月一万八千円の利息が支払われた趣旨と認められる乙第四号証及び証人下川忠平の証言並びに原告本人訊問の結果を綜合すれば、訴外下川忠平は原告に対して右貸借の成立した昭和二十五年十一月から昭和二十六年十一月まで右一ケ月一万八千円の利息を遅滞なく支払い、同年十二月には金三千円を支払つたことを認められるけれども、前記乙第一号証によれば右債務の元金の弁済期は昭和二十六年十一月六日であつて、被告及び訴外下川忠平が右期限に元金を支払わない時は原告は本件宅地を処分することができる旨の約定があること明らかであつて、右約定に徴し、原告は右弁済期後も被告が本件債務の利息を完済する限り右約定の実行を事実上猶予して居たに過ぎないことが認められる。従つて右弁済期を経過し且同年二月分の利息の完済がなかつた後において原告が右約定に基いて本件宅地の処分をする便宜のために被告に対して右宅地について抵当権設定登記手続を求めるのは相当である。また、利息制限法の制限を超ゆる利息の約定は裁判上無効であつて、債権者は訴訟において債務者に対し右制限を超ゆる利息の支払を請求することはできないけれども、裁判外において債務者が既に支払つた利息の支払は右制限を超えても利息の支払として有効である。本件においても前認定のように訴外下川忠平が原告に支払つた昭和二十五年十一月から昭和二十六年十一月まで一ケ月金一万八千円の割合による金員は利息として支払われたものであること明らかであるから、その利息制限法所定の制限を超ゆる部分を元金の支払に充つることを要求する被告の主張は失当である。被告の抗弁はいずれも理由がない。

よつて原告の請求は正当であるからこれを認容し民事訴訟法第八十九条を適用の上主文の通り判決する。

(裁判官 長瀬清澄)

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